昨日の続き

昨日は昨日のエントリーの下に書くと書いたけど、長くなったので変更。
窓から吹き込んでカーテンを大きく持ち上げる風が冷たさをはらんで、頭の芯がなんだかすっきりするようだと感じた。窓から空を見上げて雨が降らないかどうか見てみた。曇ってはいるけれど青空も覗いている。新聞も見てみたけれど大丈夫だったので海を見に行こうと思った。昨日自転車に買ってきた鍵を取り付けておいたので、もう白バイに乗った警官に声を掛けられなくて済むのというのも気を軽くした。身支度をして、母に一声掛けて出かけようとしたら、ボディソープが切れているので買って来いと言われ千円札を渡された。一時過ぎに家を出た。

自転車のタイヤの空気が少なくなっていたので、入れてから出発。風は進行方向の向かいから吹いている。海から吹いてくる風でいつものことではあるけれど、今日は本当に風が強かった。海のにおいがした。ペダルが重かったけれど、向かい風のせいだけではなく、全身の筋肉が落ちているような気がした。実際、ほとんど運動も筋力トレーニングの類もしていないのだから、当然だ。

それでも順調にこぎ続けて高層アパート群を抜けて海まで来た。川の河口沿いの道を抜けて橋を渡り、埠頭のある島に入った。僕はここが好きだと感じる。工業団地なのだけれど、この殺風景さが好きだ。今日は休日ではないので結構車どおりが多かったけど、やっぱり人がほとんどいない事に変わりはない。その中にぽつん、ぽつんと人がいる。彼らはみな休憩しているのかもしれないが、一様に虚脱した様子を見せている。僕が自転車で通り掛ってもほとんど何の関心も寄せない。

どこまでも続いているように見える低くてだだっ広い工場と鼻の奥につんとにおう低い草の生えた空き地の続く大地をうっすらと覆う雲とその隙間から覗く青空が見渡す限りの果てまで落ち行くその先の海とその向こうの黒い陸地を見たくて息を切らしながら自転車をこぎ続けた。
視界の先にコンクリートの壁が姿を現して、近づいてくる。自販機でジュースを買おうと思っていたのに忘れていたことに気づいて、自販機がないか見回しながら自転車をこいだけれど、無かった。

海に近づいても生臭いにおいがしなかった。夏休みが終わって人がごみをあまり捨てなくなったせいだと思う。不思議と磯臭さも感じなかった。思いっきり鼻から息を吸い込んでも。スロープを昇って高い壁を視線が越えていく。空が遠く黒い陸地とぶつかり、次いで青黒くうねる海にぶつかって分かたれた。風は向かい斜めから吹いて、左の頬を叩く。自転車が倒れないか心配だったけれど、止めて手すりにもたれて海を眺めた。雲の隙間から指す陽光が左手の海のさざ波を照らして、てかてかと反射していた。今日は海の向こうの陸地がよく見える。強風で塵芥が吹き飛ばされているせいだろう。二つの大きな陸地を結ぶ橋がくっきりと見えた。右手の陸地の町並みもよく見える。飛行機が低空から、信じられないほどの急角度で腹を見せて飛び立ち、機体を傾けてあっという間に芥子粒になって雲の中に消えていく。時々空気を切り裂く音が空全体に広がっていくときと、その音が聞こえないときがある。見渡しても人はほとんどいない。下方の遠くのコンクリートの壁の上に、少年二人が寝転んで遊んでいる。眩しくてよくわからなかった。右斜め前方からは風が勢いを弱めることなく吹き付けて、この季節だというのに唇が乾く。風に吹かれて身体の表面から体温を奪われているのを感じた。前髪が時折目に掛かる。髪が伸びすぎだと思った。風が強くなかったら右手の灯台のある波止場まで行ってみたいな、と思った。

帰りにスーパーでシャンプーを買って家に帰った。

バリカンで髪を切った。親父はかなり遅くに帰ってきた。
TeraPadで書いた。