図書館で本を借りた

八時半ごろに目が覚めた。十時前ごろに昼飯を食べた。母が買い物に出掛けるので十二時ごろまで待っていろと言ったので朝飯としてパンでも食おうと思ったら作ってくれた。

十三時ごろにコーヒーを飲んだ。熱い奴で汗が吹き出た。扇風機を近くに近づけてネットしていた。高く昇った日の底で、外には影がなかった。時折通る痩せた女たちは周りの植え込みやコンクリートのように白くなく、細長い黒い人影だった。自分が窓の外に目を向けていることに気づいた。向かいの棟が日を受け背後の群青色の空を切り取って真っ白にそそり立っている。向かいの棟と地面に反射して入る透明な光は僕の部屋の大きな窓から薄いレースのカーテンを透かして僕の部屋を照らさない。蝉が鳴いているのを感じた。ずっと鳴いていたのだった。底の浅い流れの早い川のせせらぎのようにうるさい鳴き声は、それの聞こえてくる藪の向こうの車道を走る車の音と似ていると思ったし、そんな音が聞こえていることを忘れていた。

硬いものが当たった音が鳴り響いた。視界が縦に真っ二つに裂けた。何かが落ちてきて地面に衝突したと思い、椅子から立ち上がって窓の外の真っ白なコンクリートの地面に目を向けた。何かが落ちている。目を凝らすと、ずっと窓の外を見ていたのに目が眩んだ。何かの周りに光がまとわりついていて、細長い何かだということだけわかった。思い出した。さっきつなぎを着た若い男が何かを抱えて僕の住む棟に入っていったことを。クーラーではないか、と思った。窓の外を見ると、蛇腹のついたホースが落ちているのが今度はわかった。音がしたときは何かの諍いごとではないかと思ったのだ。

母が後ろの台所で夕飯の下ごしらえをしている。日が傾いて部屋と窓際の僕をじかに照らしていた。頭上から重い熱気に包まれて吸い込んだ空気が熱い。開け放った窓から入る風は塊となってカーテンを持ち上げる。眠気を感じていた。図書館に行こうと思いながら三時前になっていた。椅子から立ち上がって振り向き洗面所に向かった。