山奥に行った。

朝起きてすぐに山奥の農園に行かないかと言われた。うん、とうなずき、九時過ぎに出発した。よく晴れていたし、涼しかった。やっと秋らしい気候になった感じだ。車で出かけた。母が運転し、親父がナビ役をした。僕は座っていただけ。もっと遠いかと思っていたけれど、意外と早く到着した。けれど、途中から道は狭くなっていって、母がなぜか対向車線沿いに近い位置を走ろうとする癖があるので、対向車とぶつかるんじゃないかとびくびくしていた。以前は山に囲まれた場所に住んでいたので、緑の多い山の中に来ると、ナ始めてきた場所なのになんだか懐かしかった。農園に着いたのだけれど、いきなり関係者専用の入り口から入ってしまいそうになった。向かいの駐車場に止めて農園に入った。

農園は入場料自体はタダだった。芋掘りなどをする場合などに料金が必要だった。入り口近くの建物の前にいた係員の人に、母がぶどう狩りはできないか訊いたけど、今年は既に全部採りつくしてしまったらしかった。というわけで三人で園内を回った。園内にはバーベキューのできる施設もあった。坂道が多かったので脚が悪い母はすぐに戻った。僕と親父は森のほうから抜けて駐車場に戻れないかと歩き続けたけど、行き止まりだったので、もと来た道を戻った。道中目の前に虫が飛んでくるたびに蜂じゃないかとびくびくした。母は入り口の建物で買い物をしていた。野菜とかパンだとかを買っていて、僕はパンを一個もらって食べた。

農園を出てさらに奥にあるという施設のほうにも行ってみた。途中からさらに道幅が狭くなり、一斜線になっていたところもあった。それでも母は思いっきり真ん中寄りを走る。車にぶつかるだろうと思ったけれど、多分そう言うと母はまた、あんまり逆に寄り過ぎると溝に落ちるとか言うだろうなと思い、黙っていた。他人様の車にぶつかったほうがヤバイ気がするんだが。

狭い道を越えて坂を下り、着いた。駐車場に入れて車から降りた。施設はやけに高いところにあった。急な階段を登らないといけなかった。母にはきつそうだった。そこを登る以外に入り口はなかったので仕方なかった。階段の途中で母が野良猫を拾って、僕の服を引っかいた。猫に触ったのは久しぶりな気がする。

施設の中には天然温泉があった。もちろん今日は入らなかったけど。食堂の端まで行って見ると、そこは木造りの台になっていて、そこから下界を見渡せた。手前に生えた木がちょっと邪魔だった。食堂で昼飯を食べた。本当に普通の食堂のメニュー。僕はカツカレー、母はアナゴ丼、親父はビールにつまみのセット。味はまあ、可もなく不可もなし。バーベキューのできるテーブルの上で食べた。けど、バーベキューというか焼肉のメニューの中にはしし肉というのがあった。つまりイノシシの肉だ。いつか一遍食べてみたいな。

母がまた中の店で野菜を買って、帰った。途中でスーパーにも寄った。帰りの国道から、遠くの海が見えた。